食道の壁は、内腔側から
粘膜、筋層、外膜と分けることができる。粘膜は、口で咀嚼されたとはいえ、まだ形を保ったままの食物が通過することで傷つかないように、力学的に強い重層扁平上皮で構成されている。粘膜のすぐ下層にある多数の
食道腺が粘膜の表面に粘液を分泌することで、食物の通りをよくするはたらきがある。筋層は2層構造をしており、内側の筋は輪走筋、外側の筋は縦走筋に相当するが、長軸方向に対して
筋線維は垂直/平行ではなく、いずれも斜行している。これらが順に収縮することで食物を
胃に送り出すような動きをする。これを
蠕動運動という。また、他の消化器官と異なる特徴として、口に近い側の上部食道の筋は
横紋筋で構成されているという点がある。なお、胃に近い側の下部食道の筋は他の消化器官同様、
平滑筋で構成されている。ただし、ラットなどの他の哺乳類には、全長に渡って横紋筋で構成されているものもいる。これらの筋は、
自律神経の働きで無意識下で収縮運動が起こる。「喉元過ぎて熱さを忘れる」の言葉どおり、食道の粘膜の感覚はあまり鋭敏ではない。
: 食道下部には、粘膜下に静脈叢が発達しているが、ここは
肝硬変などで
肝臓への血流が悪くなると、門脈の血液が迂回してくる箇所にあたる(門脈圧亢進)。これは、本来肝臓へ向かうはずの血液が左胃静脈を経て、上大静脈へ注ぐ奇静脈、半奇静脈に逃げるためである。もともと太い血管ではないので、大量の血液で血管が破れやすい状況になる。
: 食道の粘膜上皮の細胞は、食物によって力学的に刺激を受け続けており、通常から細胞の分裂、入れ替わりが盛んである。上皮細胞の癌化が起こる場合がある。そのため、食道癌の90%以上が扁平上皮癌である。特に胸部中部食道に好発する。