香道 wikipedia|無料辞書
香道(こうどう)とは、香りを楽しみ、日常を離れた集中と静寂の世界に遊ぶことを目的とした芸道で、一定の作法のもとに
香木を?(た)き、立ち上る香りを鑑賞するものである。
聞香または
香あそびということもある(たくは
?(火篇に主)であるが、一部の日本語環境では表示できない可能性がある。以下同様)。
同時に、香席に飾られたり、手前に使用する道具は美術的要素が高く()、組香()の記録紙には書道の要素が加わることなど、総合芸術といわれる。
◆用語の説明
・香道においては香を「聞く」と表現するのが正式であり、「嗅ぐ」という表現は誤りである(不粋とされる)ため、本稿においても「聞く」と表現している。
◆概要・歴史
香道は、
香木が
推古天皇3年(
595年)に
淡路島に漂着してから、
宗教的(主として
仏教)に利用されてきた香木を、?き、香りを聞いて鑑賞するものとして利用するようになり、結果として日本独自の芸道として発展した。特に、香木の香りを聞き、鑑賞する「聞香」()、さらに香りを聞き分ける遊びである
組香()として体系化したものである。
室町時代の
東山文化のころ、
茶道や
華道が大成するのとほぼ同時期に作法なども大成され、現在の形に近いものになったと考えられている。この頃、それぞれに異なる香りを有する香木の分類法である「六国五味」(りっこくごみ、)なども体系化された。
香道においては、
線香等のように直接点火するものはあまり用いられず、多くは聞香炉に灰と熾した炭団を入れ、灰を形作り、その上に銀葉という
雲母の板をのせ、数ミリ角に薄く切った香木を熱し、香りを発散させる方式がとられる。熱の強さによって、銀葉を灰の上で押すことで、銀葉と炭団の位置を調節することで伝わる熱を調節し、香りの発散の度合いを決める。あまりに熱が伝わりすぎて香木の樹脂等から煙が出てしまうと、香りを聞くことの妨げになるため好ましくない。弱すぎず強すぎずに銀葉を調節することは難しく、経験が必要となる。
◇香道の流派
現在は、「
御家流」(おいえりゅう)と「
志野流」(しのりゅう)が二つが主流となっている。江戸時代には加えて「
米川流」(よねかわりゅう)が盛んであった。
:
三条西実隆を流祖とし、
三条西家などの堂上公家によって継承されたが、後に地下に流れる。戦後、一色梨郷氏や山本霞月氏などにより、三条西尭山氏が宗家に推戴され、以後三代に渡り
三条西家が宗家を継承している。現宗家は三条西尭水氏。
:
志野宗信(生没年未詳)を発端とし、4代目から現在の蜂谷家に引き継がれる。年現在家元は第20世で、蜂谷幽光斎宗玄氏。
・米川流
:
東福門院に指南したことで知られる
米川常伯を祖と仰ぐ志野流の分流で、大名家に広く支持されたが維新廃藩によりそのほとんどが絶えている。現在、
安藤家御家流として見ることができる。
・風早流
:江戸時代前期の公卿
風早実種を祖とする流派であるが、現在は廃れて伝わらない。
・古心流(柳原家)
:
江頭翠山が表形式の「構造表」を用い、学ぶ人が理解しやすい段階的指導方法を確立した。門下の師範も、各地で段階ごとのテキストに沿って指導を行っている。古来の組香を修めると同時に、新しい組香の創作、鑑賞を強調する点が特色といえる。
◇香十徳
香道に関する十の得。古くから香に関する訓や効用を記したもので、香りは量ではなく、質が重要としている。
#感格鬼神 感は鬼神に格(いた)る - 感覚が鬼や神のように研ぎ澄まされる
#清淨心身 心身を清浄にす - 心身を清く浄化する
#能除汚穢 よく汚穢(おわい)を除く - 穢(けが)れをとりのぞく
#能覺睡眠 よく睡眠を覚ます - 眠気を覚ます
#静中成友 静中に友と成る - 孤独感を拭う
#塵裏偸閑 塵裏に閑(ひま)をぬすむ - 忙しいときも和ませる
#多而不厭 多くして厭(いと)わず - 多くあっても邪魔にならない
#寡而為足 少なくて足れりと為す - 少なくても十分香りを放つ
#久蔵不朽 久しく蔵(たくわ)えて朽ちず - 長い間保存しても朽ちない
#常用無障 常に用いて障(さわり)無し - 常用しても無害
◆聞香
香を一定の作法に則って香を聞くことを「聞香」(もんこう)という。
作法の例として、香炉の扱い方を取り上げる。志野流香道では、左手の上に聞香炉をおき、親指を縁に掛け、香炉を反時計回りにまわして灰の上に記される「聞き筋」(灰の上には形作るときに一本太い筋が作られるが、これを聞き筋といい、この方向が香炉の正面に一致する)を自分とは反対の側へ向け、右手を筒のようにして香炉の上に覆い、その間に鼻を近づけて香を聞く、という作法がある。
◆香道の道具
;香炉:香を聞くために、もしくは炭団の扱いのために必要な道具。
:聞香炉(もんこうろ、ききこうろ) - 香を聞くために利用する。
:火取り香炉(ひどりこうろ) - 手前をするときに、炭団を入れて持ち運ぶために利用する。
;七ツ道具:香を?きだすために使われる道具。
:銀葉挟(ぎんようばさみ) - 銀葉を扱うときに利用する特殊な形をしたピンセットのようなもの。香炉にのせるときに、銀葉を抑えるのにも利用するため、手に持ったときに下側になる挟の先の部分が平らになっている。
:香?(きょうじ) - 香木を扱うときに利用する。
:香匙(こうさじ) - 香木を銀葉の上にのせるときに利用する。
:鶯(うぐいす) - 組香において、香元(香木を扱う手前をする人)が香木を香炉にのせた後に、本香包み(答えが書いてある、香木を包んである紙)を、まとめるのに利用する。
:羽箒(はぼうき) - 香炉の灰を切る(香炉の灰を形作ること)ときに、香炉の縁についてしまった灰を掃除するのに利用する。
:火?(こじ) - 灰を切ったり、炭団を扱うときに利用する。
:灰押(はいおさえ、はいおし) - 香炉の灰を山形に整えるのに利用する。
;盆・箱、関連品:点前の必需品を納めたり、さまざまな雑用に利用される道具。
:乱箱(みだればこ)
:四方盆(しほうぼん)
::志野袋(志野袋):点前では、香包みを入れたりするために利用する。紐がついており、それは季節の花の形に結ばれる。
:長盆(ながぼん)
::重香合(じゅうこうごう)
:総包み(そうづつみ、志野流では特に志野折(しのおり)という)
;その他
:地敷き(じしき) - 香元がお点前をするときに道具を広げるところに敷く引きもの。
:香盤(こうばん) - 札聞きと呼ばれる方法によって回答がなされるときに、答えを投票する板。表は植物の絵、裏に一から三の文字が3つ(月、星が縁に書かれているものと無地のもの各一つずつ)、客が3枚の計12枚が1セット。
:銀葉(ぎんよう)
:名乗紙(なのりがみ) - 回答を出すときに、書筆する紙。
:香包(こうづつみ) - 香木を?き出す前に包んでおく紙。
きょうじ、こじの「じ」は?(竹冠に助)であるが、一部の日本語環境では表示できないかもしれない。
◆六国五味
香道では香木の香質を味覚にたとえて、辛・甘・酸・鹹(しおからい)・苦の5種類に分類する。これを「五味」という。
また、その含有樹脂の質と量の違いから以下の6種類に分類し、六国(りっこく)と称する。